還暦の向こう側の住人

平塚、大磯を散歩しているオヤジのブログです

読書感想 「下流の宴」「旅猫リポート」

 今月は雨の日も多く、読書がはかどっております(笑)。月初に「太平洋食堂」と「朽ちない桜」2冊を読了しましたが、その後4冊を読了しており現在は7冊目、「罪の声」と言うミステリーを読んでおります。

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 さて、今回の読書感想は林真理子さんの作品、「下流の宴」と有川浩さんの「旅猫リポート」です。

 下流の宴は2010年に出版され、その後NHKでもドラマ化された作品です。中高一貫の進学高校を高校で中退してしまい、中卒でフリーターとなった息子の翔。母親の由美子は医師だった父が若くして癌で他界。その後は、由美子の母の頑張りで、由美子は地方の国立大学を卒業。就職した会社で早稲田の理工学部出身の年上の男性と社内結婚

 長女は偏差値はほどほどであるが、有名お嬢様大学に在学中。そんな中、息子の翔はフリーターとなり家も出て行ってしまいます。翔が二十歳になった時に2歳年上の沖縄出身の同じくフリーターの珠緒と結婚したいと言ってきます。珠緒の家庭は沖縄の1300人ほどの離島で島の人々は早婚の為、離婚、再婚を繰り返す人が多く、彼女の両親も離婚、そしてそれぞれが再婚しています。

 由美子はそんな親から生まれた珠緒だから下流の人間なのだと決めつけます。そして同じく下流の人生を歩みだした息子はボタンの掛け違い、こんなに美しい顔立ちの翔は下流の人生を歩むような人種ではないと信じて疑いません。

 将来の夢や希望もなく、頑張ることに意味を感じずゲームを楽しむことが生活の中心の翔、高学歴で高給取りのイケメンと結婚し高級住宅街で暮らす為にアナウンサーを目指し、ハイスペックな男性が集まる合コンに精を出す姉の可奈。

 ドラマ化されただけあって、ドラマを見ているかのようにどんどん読み進めてしまいます。物語は、珠緒の異母兄弟が東京に家出をしてきた際に翔の保険証を使って警察沙汰のトラブルを起こすことから大きく動き出します。弟の犯した罪の謝罪に翔の家にやって来た珠緒を由美子は下流の人間だからこんなことを起こすのだと容赦なく罵倒します。上流とは医師の家系出身の人々を言うのか!だったら私が医者になって見せると珠緒が啖呵を切ります。一方、姉の可奈はアナウンサーにはなることは出来ませんでしたが、派遣会社の社員として一流企業で働きながら凝りもせず、ハイスペックな男性との出会いを求め継続して合コンにも精を出します。その甲斐あって京都大学出身の外資系の証券会社で働く北沢と出会い、一児をもうけ、白金の高級マンションでの生活が始まります。ところが珠緒は?翔は?可奈は?それぞれの人生の大どんでん返しを迎え物語は終わります(笑)。10年以上時は経過しており、様々な価値観、人生観を許容する社会になっているかもしれませんが、色褪せない作品だと思います。

 旅猫リポートは、なかなか趣の変わった作品だと思います。主人公の悟(サトル)と彼の飼い猫となった元野良猫のナナの新しい飼い主を探す旅日記です。作品の中では、ナナが随所で猫眼線で色々と意見を言うのが面白く、猫の生態をよく知らない私には「へーそうなんだ」と納得する場面も多々ありました。

 さて、主人公の悟は小学生の時に捨て猫のハチを飼う事になりましたが、修学旅行の最中に両親が交通事故に会い亡くなってしまいハチとも別れることになってしまいます。一人っ子の悟は母の妹に当たる独身の叔母に引き取られ、叔母の仕事の都合で何度も引っ越しを繰り返します。

 何故、ナナを手放さなければならないかはネタバレしてしまうので言えませんが、ナナの新しい飼い主を求め、悟は小学校、中学校、高校、大学時代の猫好きの友人を愛車を駆って訪ねて行き旧交を温めます。ナナは見たことのない富士山や海やカーフェリーに感心し恐れおののき・・・・、猫眼線の感想を述べて行きます。

 「別れ」がこの作品のテーマであり、とても悲しい物語なのですが登場人物たちの優しさがその悲しさを感じさせません。しかし、新しい飼い主が見つけられず悟は北海道の叔母のところに行く事に。ナナが野良猫になる決心をしてしまうシーン辺りから涙腺の弱い方は崩壊は必至ですのでお気を付けくださいね。

 愛猫家のみならず、犬、猫など飼ったことのない私でも静かに心震わさられる作品でした。

 その他に読了した本が「秋の牢獄」と又吉さんの作品「火花」でした。

 「秋の牢獄」はその他に「神家没落」と「幻は夜に成長する」の3作品が収載された短編集。さくっと4時間ほどで読了。ホラー作品と言う程のホラー感を感じなかったのは私が鈍感だからでしょうか?「夜市」を今度読んでみようかと思います。

 又吉先生(笑)作の「火花」も、やはり4時間ほどで読了。芥川賞受賞作品との事で購入しましたが、積読状態。読む本が無くて読み始めたらあっという間に読み終えてしまいました。期待値が高すぎたかもしれませんが、私には純文学は無理なのでしょうね。生まれ育った吉祥寺が出てくるところに親近感を覚えたくらいです。m(__)m