還暦の向こう側の住人

平塚、大磯を散歩しているオヤジのブログです

読書感想 「太平洋食堂」と「朽ちないサクラ」

 昨日に引き続き、今日も家におります。発電も出来る給湯器、エネファームを使用して3年が経過するのですが6月末から2度故障。2度目の修理が本日と言う事もありパナソニックの修理担当の方が来られるので自宅で待機する事としました。

 と言うことで、今日のブログは読書感想です。

 6月に読んだ柳広司さんの「ジョーカー・ゲーム」が面白かったので柳さんの著書「太平洋食堂」と同じく6月に読んだ柚月裕子さんの「盤上の向日葵」も面白かったので柚月さん著書の「朽ちないサクラ」を図書館で借り先週までに読了いたしました。

 先ずは、「太平洋食堂」ですが、日本陸軍に密かに設立されたスパイ養成機関の面々が卒業試験と称して数々のスパイ活動を展開すると言うオムニバス形式で書かれた「ジョーカー・ゲーム」とは全く趣を異にした作品でした。

 主人公の大石誠之助は紀州、新宮に居を構える開業医であり太平洋食堂と言う食堂の主です。大石はアメリカ、シンガポール、インドでの留学経験もあり医師でありながら海外にも目を向けられる国際感覚を持つ社会主義を標榜しています。特権階級に富が集中する事を嫌い、医師を続けるかたわら、貧しく弱い庶民の立場を改善しようと新聞や雑誌への投稿、そして全国各地での講演会で彼の持論を展開していきます。

 紀州、新宮と言う片田舎にいながら明治時代を代表する文化人とも交流があり、中江兆民に師事した幸徳秋水と共に活動を続けて行きますが明治政府から目を付けられ最後は粛清され死刑となってしまいます。

 大石の視線で物語は進み、時として筆者の言葉で解説が加わりながら浮かび上がってくる明治と言う時代は、権力闘争を行っていた明治政府の要人ばかりに注目が集まる歴史小説とは全く違う景色を見せてくれると思います。私にとっては、明治時代と言う認識が改まる小説でした。

 他方、柚月さんの「朽ちないサクラ」は警察を舞台としたミステリーです。警察もののミステリーと言えば月村了衛さんの作品が秀逸と思っていますが、「朽ちないサクラ」は警察の広報職員へ転職してきた主人公、泉が新聞社に勤める友人、千佳に漏らしてしまった警察の不祥事が発覚し大バッシングを受ける事に。しかし、千佳は決して自分がその不祥事を記事にはしていないと言い張ります。自分の無実を証明すると言った友人の千佳がその後、殺害されてしまいます。泉は警察学校同期の磯川刑事と事件の真相に迫って行きますが、事件のカギを握っていると思われる関係者が相次いで殺害されてしまいます。「サクラ」とは公安を意味する隠語。ラストは警察組織の嘘か誠か、おぞましい闇の中に葬られてしまいます。まあ、面白かったですよ(^^)/