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読書感想 グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす

 地球温暖化による異常気象。年々、被害が深刻になる地球はどうなってしまうのか。産業革命前の平均気温より2℃の温度上昇がもたらされてしまうと不可逆的な異常気象に見舞われるてしまうのではと国立環境研究所の江守さんは2013年に執筆された「異常気象と人類の選択」で述べられています。

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 そして現在は平均気温の上昇は1.5℃に留めるべきとパリ協定で目標とされています。そのために、2050年までにCO2の排出量をゼロにするカーボンニュートラルが求められています。

 昨年12月に読んだブルーバックス、日本の気候変動5000万年史を読むと過去にも地球の温暖化は何度か生じています。現在のCO2濃度は400ppm前後ですが、その値が1000ppmを超えていたそうです。その理由は大規模なマグマ活動による噴火に伴い大量のCO2が大気中に放出され温暖化が起きています。温暖化により南極の氷が解け、海水面は大きく上昇し多くの土地が水没しました。しかし、その後、藻類の繁殖に伴う光合成によりCO2濃度は減少し地球は冷えて行きます。1,000万年以上の時の流れの中で温暖化と寒冷化が繰り返されていた地球にとってわずか300年程度で急速な温暖化が生じている事は異常と言わざるを得ません。

 太陽光発電リチウムイオン電池と言う革新的な技術を切り開き、いち早く京都議定書をもって温室効果ガス削減を求めた日本でしたが、2011年の福島原発の事故により原子力から一気に火力発電に切り替えた為、今やCO2削減に関しては後進国となった日本。かろうじて2020年、菅内閣総理大臣が2050年のカーボンニュートラル目標を宣言する事により世界からのそしりをかわしましたが、その先の打つ手は?

 こんな日本にいるとグリーン・ジャイアントなる言葉を知る由もなく。太陽光発電と洋上風力発電に大きく舵を切った再生エネルギーに重きを置く無名の会社の時価総額が石油メジャー、エクソンのそれを抜き去っているのです。日本の関心と言えば、再生エネルギーには目もくれず、原発再稼働、LNG液化天然ガス)の輸入への依存度を高め、高効率な石炭火力発電所の新設・・・。これではどうやってカーボンニュートラルな世界を築くのでしょうか。

 この本の構成はと言うと

 第一章 カーボンニュートラル狂騒曲

 第二章 グリーン・ジャイアン

 第三章 気候変動とマネー

 第四章 テスラとトヨタ

 第五章 気候変動とイノベーション

 第六章 Z世代と資本主義の「次」

 第七章 日本に残された勝ち筋

 おわりに

 の8部構成となっています。グリーン・ジャイアントが出現しそうもない日本や後進国と言われた国々の人達はカーボンニュートラルを実現できるのか?どんな力がそうさせるのか?その答えの一つは第三章気候変動とマネーそして第六章Z世代と資本主義の「次」にあるのではと思います。第三章で述べられている気候変動ビジネスに投資家たちの多額のマネーが注がれ、ゼロカーボンを標榜し実行しない会社には投資が行われない構図が出来上がりつつあり、なんと日本においても年金の運用先(7%程度ではありますが)としてもこのような会社が選ばれ始めています。

 第六章Z世代と資本主義の「次」ではアメリカの現状について述べられています。パリ協定を離脱したトランプ政権でしたが、バイデン政権になりその舵取りは真逆に振れます。アメリカの有権者数に占める若者(Z世代、ミレニアル世代)は2020年時点で37%を占め、2028年には49%を占める構成となっており彼らがカーボンニュートラルを強く支持しています。日本とは全く異なる様相です。そして第三章とは異なり、経済成長とカーボンニュートラルは両立しない。資本主義の「次」は北欧やカナダのような新しい社会主義世界でありその世界を志向する若者が増えていると。

 第六章の最後の方では「人新生の「資本論」」から筆者の斎藤幸平さんの言葉が引用されています。

経済成長と二酸化炭素排出量の削減は両立しません。つまり、本気で”地球を守ろう”、”公正な社会を作ろう”と言う目的を達成するためには、利潤を際限なく追及する資本主義と言うシステムそのものに問題があることに気づかなくてはなりません。その資本主義から抜け出す方法を探ることが求められてるのです

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 NewsPicks副編集長である森川潤さんが多くの取材を通して書かれたこの本の先に見える7年後の2030年(私はすでに70歳を超えておりますが)、ガソリン車廃止に向かっているのか?30万kWのクリーンな小規模原子力発電所は普及しているのか?どんな日本が見られるのでしょうか。