還暦の向こう側の住人

平塚、大磯を散歩しているオヤジのブログです

9月の読書「スワン」「13階段」「おれたちの歌をうたえ」

 9月の読書ですが、なかなか読めていません。いつものようにブクログブクログ通信から読む本を探します。

booklog.jp

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 新しい本は図書館ではなかなか借りれられず、ブクログのお薦め作品の中から呉勝浩さんの「スワン」「おれたちの歌をうたえ」そして高野和明さんの「13階段」を借りてきました。

 「スワン」と「13階段」はどうにか読了。「おれたちの歌をうたえ」は半分ほど読んでいる最中です。

 いずれもミステリー小説。「スワン」は巨大なショッピングモール、スワンで二人の男により改造拳銃を用いて無差別殺人が行われます。犯人達は自らの命を絶ち、この惨劇の中から生き残った人たちのその後について物語が展開されます。

 「13階段」は江戸川乱歩賞を受賞した名作。犯行時の記憶の無い死刑囚の冤罪を晴らすために刑務官の南郷は職を辞する覚悟で自分が刑務官の時に関わりのあった前科者、三上と協力して死刑囚の無実の証拠を見出せるのか?

 「スワン」はとても凄惨な事件の中、殺人犯が死んでしまったため、生き残った人たちは被害者であるにもかかわらず、殺戮の最中に彼ら彼女らはどこにいたのか、何をしたのかで大きく世間や学校、職場からバッシングを受ける者、受けない者と立場が変わってしまいます。主人公の高校生いずみは逃げ込んだレストランで犯人の一人に銃を頭に突き付けられながら、いずみの後ろで犯人は他の逃げ込んだ客たちを撃ち殺して行きます。犯人亡き後、いずみが殺す人を選んだのだと世の中からバッシングを受けます。

 極限状態の中、生き残った被害者たちが各々が明かさなかった事実が沢山の伏線となり、その伏線の数々が最後には一つの事実に辿り着く・・・。ミステリーの定番ですが、次は自分が殺されるのではないか?極限状態の中、人はどんな行動をとるのか?人間の業について考えさせられる作品だと思います。

 「13階段」、日本の死刑制度と刑務所について教えてくれる作品でもあると思います。刑務所は犯罪者を更生させる場なのか、厳しく律すると言う罰を犯罪者に与え続ける場なのか。(犯罪者の出所後の再犯率が高い事から多くの刑務所が更生させる場ではない事を示唆しているようです)タイトルの13階段は絞首刑を行うための階段の段数でありその象徴とされていますが、実際は全く異なるシステムが採用されています。そして刑務官たちが刑を執行する事は結果として人を殺す=殺人と言う苦悩を一生背負わされ、夜もうなされています。

 さて、物語はすでに刑の執行の手続きがなされてしまった死刑囚の冤罪を晴らすには限られた時間しかありません。殺人事件の当日の記憶を失った死刑囚が思い出した「階段」に冤罪を晴らすヒントがあるのではないか。南郷と三上はその階段に犯行に使われた凶器が隠されたままになっているのではと考え、わずかな手掛かりの数々を手繰り寄せて行きます。物語の後半、次々と明かされていく事実。真犯人との命がけの最後のバトルが待ち受けており最後まで目を離せない展開は読みごたえ十分!たっぷり楽しめました。