会社をリタイアして、これから暇なんだから本を読もう!と言うことで近所の図書館で何気なく手にとった本が石原慎太郎の著書、「天才」でした。
ロッキード事件で捕まっちゃったけど、田中角栄と言う政治家を称える本なのかな・・・程度で本を読み始めました。
1人称で主人公である田中角栄が自身の半生を語る小説。
ロッキード事件のあった当時、私は18歳。ただただ、テレビ報道を鵜吞みにしてこの傑出した政治家を悪者と決めつけてニュースを見ていました。その後半世紀近く、私の認識は何も変わりませんでした。この本を読んで、日中国交正常化の大立役者、田中角栄が米国に疎まれ、嵌められた?結果の汚職事件!?
ずーっと心に引っかかる本でした。
友人に薦められて読んだ、「東京輪舞」。警視庁公安外事2課に身を置く、主人公砂田が交番勤務時代に暴漢から田中角栄を守った時から話は始まります。この本でもロッキード事件に関しては田中角栄を擁護していると思われる記載があります。(「天才」で書かれていることはやっぱり本当なんだろう!心の中で私はそう呟いていました)主人公砂田が直面していくロッキード事件、東芝ココム違反、オウム、警察庁長官狙撃事件、金正男の密入国・・・・。昭和から平成の大事件の裏側が、どの話を取っても信じられない思いで読み進めることが出来ます。次はどうなる、次はどうなる!?海外の諜報部員も巻き込んだ展開に圧倒されると思います。
ノンフィクションとフィクションが織り交ざり、自分たちが生きてきたほんの少し前の大事件の数々を社会の裏側から直視し当時を追体験することのできる秀逸な作品だと思います。
そして一貫して砂田の中には田中角栄と言う偉大な政治家の誰彼、分け隔てなく接する人柄に共鳴し、自身の正義を貫こうとする姿勢が警察の中に蔓延する組織の論理に立ち向かう原動力となっていたのではないでしょうか。